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魚っとするコラム
天然の生け簀ならではの、美味なる海幸を永遠に。
 瀬戸内海は、別名「天然の生け簀」。それくらい多種多様な魚たちが、いろいろなサイクルで回遊を繰り返す。太平洋のような外海とは違い、なべて波や潮流も穏やか。魚介類が健やかに育つのに最適な環境が整っていることから、「ゆりかごの海」と表現する向きもあるほどだ。
  その昔は、香川でも遠洋漁業をはじめとする「獲る漁業」が盛況だった。が、その後、ノリ養殖(明治中期以降)やハマチ養殖(昭和初期以降)などをきっかけに、だんだんと「育てる漁業」に移行してきた歴史がある。そして現在、香川の漁業が掲げるのは「栽培漁業」と「資源管理型漁業」という二つのテーマ。だからこそ美味なる海幸は、豊穣のままにずっと絶えることもない。
由緒ある「いただきさん」もまた、鮮魚文化の伝道師。
 高松市で「いただきさん」と言えば、サイドカー付き自転車に鮮魚を積んで行商する人たちのこと。なぜ「いただきさん」と呼ぶのかというと、話は約650年前に遡る。南北朝の騒乱で敗れた後醍醐天皇の娘「糸より姫」が西浜(今の高松漁港付近)に流れ着き、この地の漁師と結婚。暮らしを助けるために魚を売り歩いたのだが、その際に魚を入れた桶を頭の上に乗せた(いただいた)ことによるという説が根強い。「さん」付けで呼ぶのは、元々高貴な姫への畏敬の念か。
  いずれにせよ、今も「いただきさん」は漁師の奥さんが務めているケースが圧倒的。新鮮で値も安く、頼めば料理の下ごしらえまでしてくれるという、気さくで庶民的な感覚が新旧問わず多くの人に親しまれてきたのだ。そう、「いただきさん」には文化がある。
一日の始まりを告げる、港町のセリの声。
港町のせり風景 県内の魚市場では、まだ夜も明けぬうちから喧騒が湧き立つ。幾多の漁師たちが、水揚げしたばかりの魚を続々と持ち寄ってくるからだ。
  そして仲買人も集まった午前5時半、セリが始まる。素人の目や耳ではとても理解できない、手のサインや暗号めいた言葉。威勢のいいセリの声は一種の怒号にも似て、まるで鉄火場のような空気が漂う。競り落とされた魚のトロ箱には次々と落札結果を記したカードが投げ入れられ、小一時間もすればセリは一段落。仲買人は慌ただしく魚でいっぱいのトロ箱を軽トラックなどに積み込み、各々の持ち場へと引き上げてゆく。
  讃岐の朝は、ここから始まる。