香川県外からお越しになる「讃岐うどん巡り初心者」の方々へ

 
“讃岐うどん巡り”とは何であるか?
 

 この大げさかつどうでもいい命題に対する答は、1995年頃、讃岐うどん巡礼ブームを見て麺通団のマスター森氏が唱えた「香川は讃岐うどんのテーマパークである」という言葉が、最もわかりやすく言い表していると思うのである。
 この讃岐うどんテーマパーク(香川県)には、800くらいのアトラクション(うどん店)がある。では、特徴をいくつか挙げましょう。

(1)テーマパークのアトラクションであるから、ほとんどの店が、立地やシステムや麺の感じやダシの感じやオプションの種類やおっちゃん、おばちゃんのテイストが違う。でもよく似たテイストの店も割とある。

(2)香川県は狭いので、どこを拠点にしてどの店へ行くにも、たいてい1時間くらいあれば行ける。

(3)でも店の数が多いから、とても1日で全部は食べ歩けない。

(4)でも讃岐うどんはいろんな意味で食べやすいので、普通の人は1日に3〜5軒くらいは食べ歩ける。テイストの違う店をうまく回れば、飽きずにもっと食べられる。途中で観光地散策などを組み込めば、消化が促進されてさらに快適に回れる。

(5)でも店によって営業時間や定休日がかなり違うので、ちゃんと調べて行かないと食べられないことがある。特に営業時間には要注意。

 ではどう回れば一番楽しいのか? これはとりあえず、いいガイドブックやいいナビゲーターに当たるしかないでしょうね。テイストの違う店をうまく組み合わせて、観光散策も織り交ぜて、ぜひ楽しんでみてください。あ、ゴミはちゃんとゴミ箱に捨ててくださいね。
(四国学院大学教授&麺通団団長 田尾和俊)


 
僕らのストイックなうどん巡り。
 

 香川県出身とはいえ、10年以上帰ってきていなかったのに、「讃岐うどんがとんでもないブームになっている」と東京でも聞くようになり、うどんに呼ばれるようにして帰ってきた。それが僕のうどん巡りの始まりだった。
 最初はなんの気なしに始めたうどん巡りだったが、あんまりにも頻繁に行くものだから、そのうち「映画を撮るんですね」という話になり、とうとう実際映画『UDON』のメガホンをとってしまった。
 なぜ、そんなにまで僕らがうどん巡りにハマってしまったか?
 それは、うどんのエンターティメント性にある。ご承知の通り、うどんは、うどんの味だけでなく、ロケーションや人も含めて構成されている。うどん巡りとは、うどんそのもの、というより、うどんにまつわるあれこれを含めて楽しむものなのである。

 僕らのうどん巡りは何せ体育会系だ。1回の来香で10店ほど回る。ストイックにうどんに没頭するのだ。メーリングリストを活用し、オンタイムで情報をいれて、効率よく回る。塩分を排出するドリンクをとりながら、甘みを欲しがる身体にパフェなんかも与えながら。東京ではあり得ないうどんを楽しむには、このくらいしなくちゃ、と僕は思っている。

 何度か訪れると、自分の好みの麺がわかってくる。好きなうどん店も限られてくる。そこから、うどんや巡りの真の楽しみが出てくると僕は思う。そのうどん店の一番美味しい時間帯を探す。感動的なシチュエーションを求める。あげだちのタイミングを狙う。かまたまには卵1つにつき何玉のうどん玉が合うんだろう、などと考察するのもいい。一度行っておしまい、ではなく、究極のうどんに出会うために通い詰める。うどん巡りのもう一つの楽しみはここにある。より深く突き詰めていくうちに、きっと多くの感動とも出会うだろう。
 ドラマはいつも、現場で生まれるのだ。

 (映画監督 本広克行)